ハン・ガン著、訳、クオン、2016年、四六変形判並製、280頁
定価:2,750円(本体2,500円)
光州事件から約三十五年。あのとき、生を閉じた者の身に何が起きたのか。生き残った者は、あれからどうやって生きてきたのか。未来を奪われた者は何を思い、子どもを失った母親はどんな生を余儀なくされたのか。三十年以上の月日を経て、初めて見えてくるものがある――。丹念な取材のもと、死者と生き残った者の声にならない声を丁寧に掬いとった衝撃作。『菜食主義者』でマン・ブッカー賞国際賞に輝いた、著者渾身の物語。
〈店主によるコメント〉
ハン・ガンはこの小説を書くために資料を読みながら、「現在が過去を助けることはできるか?生者が死者を救うことはできるのか?」という問いを、「過去が現在を助けることはできるか?死者が生者を救うことはできるのか?」という問いに反転させなければならないことに気づいたという。
「以後、この小説を書いている間、本当に過去が現在を助けている、死者が生きている者を救っていると感じるときがあった。ときどきあの墓地を再訪したが、不思議なことにそこに行くたび晴天だった。目を閉じると陽の光のオレンジ色がまぶたの内側に満ちあふれた。それは生命の色だと、私は感じた。言いようもなくあたたかい光と空気が私の体をとりまいていると」(ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」斎藤真理子訳、https://book.asahi.com/jinbun/article/15556809)
この小説を読むと、言いようのない苦痛を感じるのに、なぜか再び歩いていけそうな気がするのは、そこに光があり、その光が私たち読む者をも包み込むからかもしれない。